※当記事は、2025年9月時点での内容です。
フリーランス薬剤師の活動をしていて、将来の備えや資金繰りに不安に感じることはありませんか?
「いざというときの資金調達をどうしよう…」と思ったときに役立つのが「小規模企業共済(しょうきぼきぎょうきょうさい)」です。
実はこの制度、知っているかどうかで資金面の安心感が大きく変わるのですが、薬剤師で知っている方は少ないのではないでしょうか。
小規模企業共済は、加入のタイミングを逃すと、後から入ることが難しいため、事前に制度があることを知ったうえで活用するかどうかを選択することが大切です。
今回は、小規模企業共済を初めて調べる方向けに、下記の5項目について、フリーランス薬剤師目線で解説します。
①小規模企業共済の基本的な仕組み
②加入できる人(加入要件)
③いつから貸付が利用できるのか
④実際にいくら借りられるのか
⑤借換制度による資金繰りの柔軟性
この記事は、くくたる│フリーランス薬剤師+合同会社フリラ・プラス│18薬局契約中(Xアカウント)が作成しています。
無料コンサルやお得情報満載の公式LINE登録はこちら!
2023年9月にフリーランス薬剤師の書籍を出版しました!
ありがたいことにベストセラーを獲得できましたので、興味を持っていただけたらぜひ購入も検討してみてください!
そしてその続編も出版しました!
フリーランス薬剤師になってから得られた知識や経験、経営者からのアドバイス、私以外のフリーランス薬剤師の方5名のコラムも載せた力作です!
どちらの書籍もKindle Unlimitedに加入されている方は【無料】でお読みいただけます!
Kindle Unlimitedは30日無料体験や特別プランがあるため、加入を検討中の方はぜひこの機会にお試しください!
小規模企業共済とは?
小規模企業共済は、小規模企業の個人事業主や中小企業経営者等のための退職金(共済金)制度です。
その仕組みの一環として、掛金を原資にした貸付制度(一般貸付・特別貸付)も用意されており、これが安心した資金繰りに役立ちます。
※あくまで中心は「退職金制度」であり、貸付はそれに付随する仕組みです。
※本記事では、主に一般貸付についてをまとめます。
加入できる人(加入要件)
フリーランス薬剤師として活動されている方の多くは個人事業主だと思っておりますが、法人役員の場合も含めて紹介します。
なお、常時使用する従業員の数は、個人事業主、法人どちらの場合でも加入タイミングで当てはまっている必要があります。
個人事業主の場合
対象:
・個人事業主(フリーランス薬剤師)
条件:
・税務署に開業届を提出し、事業を営んでいること
・加入タイミングで常時使用する従業員の数以下に当てはまる方
※開業届と確定申告によって「事業所得」があることが実質的な加入要件です。
法人役員の場合
対象:
・株式会社、有限会社、特例有限会社の取締役または監査役の方
・合名会社、合資会社の業務執行社員の方(業務執行社員を定款で定めた場合、その定められた社員)
・「業務執行社員」として登記されている合同会社の社員
など。
条件:
・役員登記し、事業に従事されている方
・加入タイミングで常時使用する従業員の数以下に当てはまる方
常時使用する従業員の数について
この従業員数の基準は業種ごとに異なり、加入時点で判定されます。
・製造業・建設業など → 常時使用する従業員20人以下
・商業・サービス業 → 常時使用する従業員5人以下
※「常時使用する従業員」には正社員のほかパート・アルバイトも含まれる場合があり、詳細は加入前に確認が必要です。
小規模企業共済加入後に従業員数が増加して当てはまらなくなった場合は、解約をせずに加入を継続できます。
会社員との兼業について
加入後に会社員と兼業する場合は対象
→ 個人事業主や法人役員などの雇われていない状況で、後から個人事業主と兼業で雇われる場合(会社員)は、解約をせずに加入を継続できます。
加入時に会社員として雇われている場合は対象外
→ すでに雇われている状況で、副業で個人事業をしている場合は加入できません。
例:会社員として勤務しながら副業で新たにフリーランス薬剤師を始めた場合は対象外。
・個人事業主(法人役員)単独 → 共済加入 → あとから会社員と兼業 → OK
・会社員 → 副業で個人事業主 → 共済加入 → NG
フリーランス薬剤師にとっての主なメリット
1. 掛金は全額が所得控除になり、大きな節税効果が期待できる
支払った掛金はその年の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引けます。
月1,000円〜7万円まで(500円単位で増減可)拠出でき、負担に合わせて調整可能です。
例えば年間84万円(毎月7万円)を積み立て、税率(所得税+住民税)が30%の場合、約25万円の税負担軽減につながります。
2. 借入(一般貸付制度)で実質的に掛金を“回収できる”
積み立てた掛金は原則引き出せませんが、掛金残高をもとに一般貸付制度を利用すれば現金化が可能です。
借入限度額は掛金総額の7〜9割、金利は年1.5%(一般貸付)と非常に低水準です。また、条件に応じて利用できる特別貸付では、年0.9%の低金利が適用されることもあります。
例:年84万円(7万円×12カ月)を積み立てた場合
借入可能額は 約58.8万〜75.6万円
節税で得をしながら、必要なときには掛金の一部を“借入”という形で回収できるため、iDeCoのように資金が眠って困ることはありません。
※加入後すぐは借入可能タイミングに注意が必要です。
【iDeCoと小規模企業共済の違い】
・iDeCoも掛金が全額所得控除の対象で、節税効果は大きいです。
・ただしiDeCoは60歳まで引き出せず「完全ロック」されます。
・小規模企業共済は一般貸付を通じて資金を引き出せるため、事業資金や急な支出にも対応可能。
3. 借入金の用途に制限がほとんどない
一般貸付は、事業資金はもちろん、事業関連の生活資金や設備資金など幅広く利用可能です。
銀行融資のように資金使途を厳しく縛られにくく、資金繰りの自由度が高い点も大きな利点です。
借入可能時期と注意点
小規模企業共済の貸付を利用できるのは「掛金を12ヶ月以上の積み立て後」からです。
ただし、実際の申込可否は 年2回の「加入者資格判定基準日(4月末・10月末)」 で確認され、その結果に基づき、利用開始は次の期間からとなります。
・4月末に条件を満たす → 10月1日〜翌年3月31日まで申込可能
・10月末に条件を満たす → 翌年4月1日〜9月30日まで申込可能
※「12ヶ月経過=すぐ借りられる」とは限らず、さらに半年ほど待つケースが多い点に注意が必要です。
借入可能時期の具体例
・2025年3月に加入(掛金積み立て開始)
・2026年3月で12ヶ月経過
・2026年4月末の加入者資格判定基準日で資格が認められる
・実際に借り入れできるのは2026年10月1日以降
このように「12ヶ月達成 → すぐ貸付申込」とはならず、判定日を経由して約半年後から初めて利用可能となる点を考慮して、加入後から1年半頃までの資金繰りには注意が必要です。
借換制度で資金繰りを柔軟に
小規模企業共済には「返済と同時に新たな借入」を行える仕組みがあります。
・同額借換:同じ金額を借り直す(返済期日を繰り延べるイメージ)
・増額借換:返済と同時に借入額を増やす
・減額借換:返済と同時に借入額を減らす
この制度により、借入期間を延長したり金額を調整したりと、資金繰りをスムーズにコントロールできます。
同額借換の具体例
同額借換の具体例は、下記のようなケースです。
①一般貸付で 75万円を借入(84万円の掛金総額の約9割に相当)
②翌年、返済期日に合わせて 75万円を返済すると同時に、再度75万円を借入
③この「同額借換」を繰り返すことで、資金繰りを継続的に維持できる
「返済してまた同じ金額を借りるって、意味あるの?」と疑問に思いますよね?
しかし、この仕組みを利用すると以下のようなメリットが得られます。
①キャッシュフローとしては「自己資金9万円」+「借入75万円」で、84万円を掛金として積み立てられる
②毎年84万円を掛金として積み立てている場合、所得控除で 約25万円の節税効果(税率30%と仮定)が得られる
③借入を継続しながらも節税効果を確保できるため、現金を大きく減らさずに節税が可能
「同額借換」は、資金繰りに余裕がない年でも掛金を継続的に積み立てられる仕組みとして活用できると考えられます。つまり、掛金を止めずに節税メリットを維持しながら資金繰りも回せるのが最大の特徴です。
また、掛け金は1000〜70000円で設定できるため、事業収入が少なく厳しいときは、月1000円に設定すれば、解約せずに無理なく続けることも可能です。
ちなみに借入金は、借入金として仕分けるため税区分は対象外になると考えられます。
※仕訳処理間違えると大変なので、ご自身で入念に調べるようお願いいたします。
まとめ
今回の記事のまとめです。
・加入要件を満たしたフリーランスや中小企業役員が対象
・掛金全額が所得控除=強力な節税メリット
・一般貸付で掛金を実質回収=流動性も確保
・借換制度で資金繰りを柔軟に調整
フリーランス薬剤師にとっては、余裕資金を銀行に寝かせるよりも賢い選択肢になり得ます。
まずは制度を知ったうえで、加入するかしないかを自分で判断することが大切です。
最後に
というわけで、今回はフリーランス薬剤師における小規模企業共済のメリットと加入タイミングの重要性について紹介しました。
小規模企業共済は、単なる退職金の積立制度というだけではなく、うまく活用をすることで節税+資金繰りの安心感を両立したキャリア設計が可能になります。
制度を知ったうえで、加入するかしないかを自分で判断することが大切です。